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あれとかこれとか

2011/02/14

自作物の掃き溜め

書こうと思ってカテだけ作ったのとか
表示テストだからがーっと下までスクロールすると良いよ
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Rondo

2010/09/03

『 なかないわたしを あわれんでくれますか 』


 ガタガタと馬車で馬たちが運ばれていく。
 運ばれる白馬たちは瞬き一つせず揺られる。
 美麗に飾り立てられた艶やかな白馬たち。
 色鮮やかな贋物の宝石と美しいリボンを身にまといツンと澄ましている。

 反対に馬車を引く馬たちは粗野で口汚い。
 様々な毛色の逞しい体は土埃と泥で汚れていた。

「なんで俺たちがロンドを運ばなきゃいけないんだ」
「仕方ないだろ。それのお陰で飯が食えるんだから」

 どこまでも続く赤茶けた地面をもうもうと土煙を上げて走る。
 こんなところに娯楽なんて欠片ほどもありやしない。
 馬たちが喋りながら歩いたところで前の馬車にさえ付いていけば鞭も降りなければ罵声も飛ばない。
 御者はとうの昔に眠ってしまい今や高鼾だ。

「それにしてもどうせ運ぶなら違う物がよかったぜ」
「まぁな、よりによってロンドとはついてないな」

 ロンド
 そう呼ばれた積荷の白馬たち。
 彼らはどれだけ口汚く罵られても厭味の一つも言わない。


『また品のないのが何か言ってるよ』
『言わせておけば良い、あんな奴ら』

 荷馬車の中で白馬たちが声を潜める。
 美しい身体が舞い上がる土埃で汚れぬようにかけられた布を纏いながら。

『それより次の町はどんなところだろう』
『賑やかだと良いわね』
『お祭りに出るらしいよ』
『それは凄いね』

 白馬たちの話題は自分たちに向けられる愚痴から次の町へ流れる。
 どうやら次の町の祭りの目玉として呼ばれたらしい。
 これだけ美しい白馬をこれほど揃えた旅団はこの国では数少ない。
 さぞ持て囃される事だろう。

『あの馬たちはまた柵の外かな?』
『当たり前でしょ、あんな馬車馬』
『それもそうか』

 馬車馬と呼ばれた馬たち。
 彼らもどれだけ馬鹿にされても反論の一つも返さない。



 辿り着いたのは地方都市にしては大きな町。
 白馬を乗せた荷馬車は町の人々に手厚い歓迎を受ける。
 これから数日間、町の人々を楽しませるために呼ばれたのだ。

 長旅を終えた白馬は荷馬車から降ろされ身体を綺麗に磨かれる。
 曇り一つなく手入れされた美しい姿が人々の前に晒されれば感嘆の溜息が零れる。
 一頭とて同じ姿はなく、輝くガラスと細い布で飾り立てられた見事な馬たち。
 彼らを運んできた馬車馬など誰も目に留めない。
 けれど彼らは微塵も気にしていないようだ。

「やっと終わったな」
「次はロンドじゃなくて人間がいいなぁ」
「あぁ、御者は煩いし鞭は痛いけどロンドよりマシだぜ」

 旅団の最大の花形であるロンドに傷でもけようものならどれだけ酷い仕打ちを受けるか分からない。
 それに比べれば煩い御者も振り下ろされる鞭も我慢できると言う物だ。
 久しぶりの綺麗な水と柔らかな飼葉を食みながらテントの影で愚痴を零す。

「あれだけ口煩くできるんだから自分で走ったらどうだ」
「そりゃ無理ってもんだろ」
「御綺麗なロンド様にゃ無理な話か」

 馬たちの馬鹿笑いも今は誰も気に留めない。

 年に一度の大きな祭り。
 目の前に現れた心奪われる白馬たち。
 物陰の薄汚れた馬の嘶きなど誰の耳にも届かない。

「哀れなロンド」

 馬車馬が呟いた言葉すら雑音に混じって消えた。


 翌日は朝から馬車馬に代わって白馬が走り回っていた。
 急拵えの簡素な鉄柵。
 流れる緩やかな音楽。
 ぴかぴかに磨かれた淡い木目の美しい盆。
 その上で優雅に踊る白馬たちは着飾った客を乗せていた。

 白馬はこのためだけに存在していた。

 日が暮れても人の波は変わらず白馬たちは延々と走り続けた。
 子供たちの笑い声も、大人のお喋りも止む事はない。
 それは日が落ち、月の支配する宵になっても変わらなかった。

『やぁ馬車馬』
「よぉロンド」

 闇に塗られた町の広場。
 その中央に置かれた美しい傘を乗せた舞台。
 人々が寝静まった頃、一頭の馬が白馬に近づく。
 闇に紛れてしまいそうな濃い色の馬。
 対峙するのは輝かしい明かりの下の白馬。

「良い夜だな、満月だ」
『あんなぼんやりした物が良いのかい?』
「あぁ、最高に綺麗な灯だ」
『舞台に立てないあなたたちには御似合いね』
「舞台でしか立てないロンドには見えない色だからな」
『荷運びしかできない負け惜しみか?』

 クスクスと周りの白馬が笑い出す。
 けれど馬は少しも気にせず言葉を返す。

「荷運びもできねぇ荷物に言われたかねぇよ」
『みっともない、お客を乗せたこともないクセに』
「俺たちの客はお前らロンドだからな」

 舞台の上の白馬たちは次々に言葉を投げる。

『馬車馬は埃っぽい道を走るのが似合いだわ』
『お前のような薄汚い馬に乗りたがる客なんていないよ』
『人に使われてるのがそんなに誇りかい?』

 けれども馬は腹を立てるどころかとても冷静。
 そして、とても悲しそうな顔をして一つ涙を零した。

「哀れなロンド、己の脚で駆けることもできない串刺しの馬」

 その一言にざわめきがぴたりと止まります。

「朝の静かさも、昼のざわめきも、夜の黙も知らないなんて」

 それは馬が感じてきた心地良い瞬間。
 仲間と走り、共に生きてきた時間。

「春の心躍る風も、夏の冷たい水の心地良さも、秋の物悲しい空気も、冬の凍える月の美しさも知らないなんて」

 荷馬車にいる白馬たちはそんなもの知らない。
 人々が口にする季節の移り変わりだって関係ない。

「俺たちの身体は泥だらけになったって傷付いたって構わない」

 馬車馬はいつだって泥と埃だらけ。
 気まぐれに御者が梳いたところですぐに汚れるのはいつものこと。
 泥の中に足を踏み入れることも、砂嵐を走るのも特別なことじゃない。
 小さな怪我や傷は絶えることないが馬たちは誰も気にしない

「お前たちはいつまでも綺麗なままで生きるが良い、俺たちはそのうち老いて死ぬがな」

 馬は路地に蹄を当ててコツコツ鳴らす。
 けれど白馬はそのまま。
 身動きなど取れるはずもない。

「惨めな馬車馬、人の力で走り続けるしかない作り物の馬」

 馬はくるりと踵を返し尾を振る。
 白馬は一頭たりとて口を開かない。

「獣はな、悲しいときはナくんだ、作り物のお前らはどうする?」

 泣けるはずなどない。
 ガラスが埋められただけの黒い穴などで。
 啼けるはずなどない。
 浅い溝が彫られただけの線の口などで。

「あばよ、綺麗なロンドさん」

 満月の下、薄汚れた馬は白馬たちに背を向けて歩き出す。
 ヒン、と物悲しい一声を残して。
 馬の姿が見えなくなっても白馬たちはそのまま。
 朝が来ても、舞台から降ろされても、荷馬車に積まれてもそのまま。


 いつしか馬たちは入れ替わり、白馬たちの見知った馬はいなくなった。
 白馬たちも旅団から旅団へ売り払われる。
 時は流れ、白馬たちは荷馬車で運ばれることもなくなった。

 けれど白馬たちは走り続ける。
 微塵も動かぬ足で、肝心な物の見えぬ目で、何も感じぬ身体で。

 今日も流れる緩やかな曲。
 曲に合わせて白馬が駆ける。

 今日も流れる曲はロンド。
 くるくるくるくる途切れることのない曲。
 進んでは戻り、戻っては進む。
 戻ったのか、進んだのか、いまやどこにいるのかすら分からない。


 もはや白馬を哀れむ者はいない。
 みな一様に白馬を褒め称える。

 古より走り続ける美しい馬々。
 ガラスの瞳、白い身体を彩る色とりどりのリボン、輝くイミテーションの宝石。

 傷付けば修復され、曇れば磨かれる。
 蹄が欠けても、足が折れても、鬣が削れても丁寧に直される。
 何度目玉を抉られても、無残に白い塗装を剥れても、自慢の装飾を取られても必ず元に戻される。
 いつかの馬が告げたように白馬たちは永遠に走り続けなくてはならない。


 もはやロンドを哀れむ者はいない。
 ロンドの代わりに泣く者もいない。
 ロンドの代わりに啼く者もいない。
 彼らをロンドと呼ぶ者すらいない。

 あの時と唯一変わらない月は今日も電飾の傘の上で静かに輝くだけ。


 今夜も明かりが消えた頃木馬たちの囁きが聞こえる。

『 なかないわたしを あわれんでくれますか 』


 答える者はいない。
- more - 
 

novel

2010/08/31

novel の簡易表紙

この辺に色々書いておくと良いかも

たとえば注意書きとか



カテゴリ別新着一覧が取れれば表示するのも良いと思うんだけどね

手動で更新履歴を入れるのはこのページが管理画面で埋もれやすいからオススメできない



ちなみに右上から選択できる小話は表示確認もかねて自作物を展示してます

気が向いたら読んでみてね(*・∀・*)
 
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